「ANAの普通席」「プレミアムクラス」――この呼び方を、自分はもう10年以上当たり前に使ってきた。予約画面でも、空港のカウンターでも、ずっとそうだった。
その当たり前が、2026年5月19日搭乗分から一斉に書き換わる。明日からだ。
ANAが日本国内線の運賃体系を全面リニューアルする。運賃は「シンプル」「スタンダード」「フレックス」の3本柱に整理され、これまでの「普通席」はエコノミークラス、「プレミアムクラス」はファーストクラス(プレミアムクラス)へと名称が変わる。さらに搭乗者名の入力ルールや幼児の年齢区分まで、予約・搭乗の根っこのルールが国際線と共通化される。
この記事では、ANAグループ公式プレスリリースを一次ソースに事実を整理した上で、国内線をよく使う旅行者目線で「結局どの運賃を選べばいいのか」「マイル・プレミアムポイントは得か損か」を独自に考察する。
何が変わるか — 2026年5月19日搭乗分からのファクト整理
ANAホールディングス公式リリース(2025年5月20日付・関連2本)から、押さえておくべき事実は次の通り。
- 適用開始:2026年5月19日搭乗分から
- 新運賃の発売開始:2025年5月29日 9:00(日本時間)から
- 新しい運賃の柱:シンプル/スタンダード/フレックスの3種(このほか時期限定の「セール」運賃)
- クラス名称変更:普通席 → エコノミークラス、プレミアムクラス → ファーストクラス(プレミアムクラス)
- 方針:予約・搭乗ルールを国際線と共通化していく
- 新サービス:往復運賃の導入、乗り継ぎ可能時間を24時間以内まで拡大、マイルによるアップグレードを新設
ポイントは、これが「値段の付け替え」ではなく「予約の仕組みそのものの再設計」だという点だ。運賃名が変わるだけなら覚え直せば済む。だが今回は、変更ルール・購入期限・マイルの貯まり方・幼児の扱いまで一緒に動く。よく乗る人ほど影響が大きい。
3つの新運賃、何がどう違うのか
公式の説明をベースに、3運賃の性格を整理する。ざっくり言えば「安さ優先=シンプル」「バランス=スタンダード」「自由度最優先=フレックス」だ。
| 運賃 | こんな人向け | 購入期限 | 予約変更 | 付帯サービス |
|---|---|---|---|---|
| シンプル | とにかく安く移動したい | 前日まで | 原則不可(最小限) | 最小限に絞る |
| スタンダード | 迷ったらこれ。普段使いの軸 | 前日まで | 手数料を払えば可 | 事前座席指定・アップグレード対応 |
| フレックス | 予定が動く出張・帰省 | 搭乗日当日まで | 空席待ち・予約変更が手数料なし | 当日の柔軟対応に最も強い |
これまでANA国内線の運賃は「バリュー」「スーパーバリュー」「ビジネスきっぷ」など名前も条件も入り組んでいて、正直どれが自分に合うのか分かりにくかった。今回の3分類は、国際線(エコノミーのBasic/Standard/Flexなど)と発想を揃えてきた形だ。「国内も国際も同じ考え方で選べる」のは、たまにしか乗らない人にとってはむしろ分かりやすくなる。
「迷ったらスタンダード」が公式の推し
ANAは特設ページで「迷ったらスタンダード運賃」と明言している。事前座席指定もアップグレードも使え、いざとなれば手数料を払って変更もできる。普段使いの基準点として設計されているのがスタンダードだ。逆に言えば、シンプルは「変更しない自信がある人専用」、フレックスは「変わる前提の人専用」と割り切るのが正しい。
地味だけど影響大 — 国際線との共通化ポイント
運賃名の変更より、旅行者が実際に「えっ」となるのはこちらかもしれない。予約・搭乗の基本ルールが国際線基準に揃えられる。公式リリースで明示されている主な変更は次の通り。
- 搭乗者名がヘボン式ローマ字に:これまでのカタカナ入力から、国際線と同じローマ字(ヘボン式)入力へ。パスポートと同じ綴りに揃える感覚
- 幼児の対象年齢が「2歳未満」基準に厳格化:座席を使わない幼児の区分が「2歳以下」から「1歳以下(2歳未満)」へ。2歳の子は座席ありの小児扱いになるケースが出る
- 非会員もネット空席待ちが可能に:ANAマイレージクラブ非会員でもインターネットからの空席待ちができるようになる
- 手荷物ルールが個数基準に統一:重量だけでなく個数の考え方が国際線と揃う
- 搭乗優待(アップグレード等)の有効期間が1年半に拡大:使い切れずに失効、が起きにくくなる
特に注意したいのが幼児の年齢区分だ。家族旅行で2歳前後の子どもがいる場合、これまで「膝上で無料」だったのが「座席を取る小児運賃」になる可能性がある。料金が想定より上がる典型パターンなので、5月19日以降の予約では子どもの誕生日と搭乗日の関係を必ず確認しておきたい。
旅行者の最大関心事 — マイルとプレミアムポイントは得か損か
ここがマイラー・SFC修行勢にとって本丸。運賃ごとにマイル積算率が変わる。各種マイル系情報サイトの整理を突合すると、概ね次の構造になる(最終的な数値はANA公式の積算条件ページで要確認)。
| 運賃タイプ | エコノミークラス積算率 | ファースト(プレミアム)積算率 |
|---|---|---|
| フレックス/Biz/ANAカード割引 | 100% | 150% |
| スタンダード/株主優待割引 | 80% | 130% |
| シンプル | 70% | 120% |
この表をどう読むか。旅行者のタイプ別に整理する。
①「安い運賃で大量に乗ってPP稼ぐ」修行スタイルには逆風
従来、安い運賃でも一定の積算率が確保できたため「最安値クラスを数多く飛んでプレミアムポイントを積む」のが王道だった。新体系ではシンプルの積算率が70%まで下がる。同じ路線を同じ回数飛んでも、貯まるマイル・PPは目減りする方向だ。SFC修行のコスト計算は、5月19日以降は組み直しが必要になる。
②「年数回、普通に旅行で乗る」層は実はそこまで変わらない
一方、年に数回しか乗らない一般旅行者にとっては影響は限定的だ。そもそも国内線数回分のマイルで特典航空券に届くわけではない。むしろ「往復運賃の導入」「乗り継ぎ24時間以内まで拡大」「マイルでのアップグレード新設」といった改善のほうが、体感メリットは大きい。とくに乗り継ぎ枠が24時間に広がるのは、地方発で乗り継いで旅行する人には地味に効く。
③ ファースト(旧プレミアム)狙いの人はむしろ妙味あり
ファーストクラス(プレミアムクラス)はフレックスで150%、スタンダードでも130%と高い積算率が維持される。アップグレードがマイルで新設される点も合わせると、「ファースト系を狙って効率よく貯める」動きとは相性が良い。安く飛んで数で稼ぐより、単価の高い席で積算率を取りにいく――稼ぎ方の重心が移ったと読むのが正確だ。
結論 — タイプ別「どの運賃を選ぶべきか」
独自考察として、旅行者タイプ別の立ち回りを置いておく。
- 予定が固い旅行(観光・帰省で日程確定済み) → シンプル。変更しないなら付帯を削って最安が合理的。ただし積算率70%は許容する前提
- 普段使い・少し予定が動くかも → スタンダード。座席指定もアップグレードも使え、いざ変更も効く。公式の推し通り「迷ったらこれ」
- 出張・予定が読めない → フレックス。当日変更・空席待ちが手数料なしの安心料と割り切る。積算率も最も高い
- マイル・PP重視 → 「安い席を数で」から「フレックス/ファースト系を狙って」へ戦略転換。修行ルートは要再計算
注意点 — 移行期に踏みやすい地雷
- 適用は「搭乗日」基準:購入日ではなく搭乗日が2026年5月19日以降かどうかで新旧が分かれる。5月18日までに買っても、搭乗が19日以降なら新ルール
- 2歳前後の子連れは料金が上振れする可能性:幼児の年齢区分変更で、膝上無料だった子が座席ありの小児運賃になるケースに注意
- 名前の入力はローマ字(ヘボン式)へ:これまでの感覚でカタカナ入力しないよう注意。家族分の綴りも事前に確認
- 積算率の数値は最終的に公式で確認:本記事の積算率は各種情報サイトの整理を突合した参考値。SFC修行など金額判断を伴う場合はANA公式の積算条件ページを必ず確認
まとめ|国内線の”当たり前”が2026年5月19日に切り替わる
要点を3行で。
- 2026年5月19日搭乗分から、ANA国内線はシンプル/スタンダード/フレックスの3運賃へ。普通席→エコノミー、プレミアム→ファーストへ名称も変更
- 運賃名だけでなく、搭乗者名のローマ字化・幼児年齢区分・手荷物ルールまで国際線と共通化。よく乗る人ほど影響大
- マイル積算率は運賃で変動。「安い席を数で」型は逆風、「フレックス/ファースト系を狙う」型は妙味。一般旅行者は往復運賃・乗継24時間拡大の恩恵が大きい
「ANAの普通席」という10年来の言い回しは、明日で過去になる。次にANA国内線を予約するときは、運賃名・名前の入力欄・子どもの年齢区分の3点だけ、いつもの感覚を一度リセットして向き合ってほしい。とくにマイルで判断する人は、自分の修行・出張ルートを5月19日基準で組み直しておくことをおすすめしたい。

